緋色の7年間

制約を原動力に。法律事務所の弁護士と大手企業の法務担当者が、時に制約と闘い、時に制約を迂回していきます。

刑法

このブログの目次

※2016年1月31日更新 主要な記事に限って、目次をつくってみました。ブログ内の記事を探す場合には、参考にしてください。基本的に、前編が学説のまとめ、後編が判例のまとめになっています(意識して書き分けていないので、そうなっていないものもあります)…

正当防衛と自招侵害2

こんにちは~ 前回に続いて、今回も自招侵害がテーマです。ただ、自招侵害の問題は難しすぎです…(TT) 解説ができない… ◆判例の展開(つづき) (1) 「侵害の急迫性」の問題? では、決定文を読んでみましょう。 本件の公訴事実は,被告人の前記〔…〕行為を傷…

正当防衛と自招侵害

こんにちは~ 本当に本当に寒くなってきました…(TT) 防寒対策に気を付けてくださいね~ ◆何が問題となっているのか 今回のテーマは「自招侵害」です。論点名は聞いたことがあるとは思いますが、どこの要件の問題だと考えているでしょうか? 感覚的には「自分…

刑法各論と構成要件要素

◆何が問題となっているのか こんにちは~ 今回は、刑法各論の観点からの構成要件要素の把握の仕方をテーマにします。 構成要件要素とは、簡単に言えば、条文に記載された犯罪の成立要件を構成する要素のことです。刑法総論では、行為、結果、因果関係、故意…

司法試験「採点実感等に関する意見」のまとめ(刑法平成20~25年)後編

※加筆・修正しました。2014/11/29 前編(総説)および中編(刑法総論)に続きまして、今回は後編の「刑法各論」の事案分析(と知識)についてです。前編で書きましたが、考査委員からは「総論に比較して各論の問題点について的確に論述する能力が欠けている…

司法試験「採点実感等に関する意見」のまとめ(刑法平成20~25年)中編

◆事案分析で陥りやすいミス 前編で書きましたように、採点実感を読む限り、試験委員から問題点として最も指摘されているのは「事案分析」の能力の欠如です。ここで言っている「事案分析能力」とは、「事実関係を的確に分析・評価し、具体的事実に法規範を適…

司法試験「採点実感等に関する意見」のまとめ(刑法平成20~25年)前編

◆「採点実感等に関する意見」について こんにちは~ 今回は、司法試験のお話です。現行の司法試験制度では「出題趣旨」とは別に「採点実感等に関する意見」(以下、「採点実感」)なるものが公表されています。平成26年11月26日現在で、平成20年から25年のま…

故意と具体的事実の錯誤2

◆学説の対立 前回は、具体的事実の錯誤の問題は、故意(の内容)の抽象化の問題であり、認識した結果と現実に発生した結果との食い違いがどこまで許容されるかが問題となっているということを説明しました。これについて、現在では「構成要件の範囲内の錯誤…

故意と具体的事実の錯誤

こんにちは~ 今回のテーマは錯誤論です。錯誤論をあっさりと考えてしまう人は多いのですが、犯罪の成否に大きく影響するので重要なテーマといえます。また、罪数処理も含めると、実は非常に難解です。 実務的には、錯誤論ではなく罪数論の絶妙な加減によっ…

未遂犯と「実行に着手」2

※2015年3月3日 追記 ◆判例の展開(つづき) (1) 前回の内容のまとめ 前回は、クロロホルム事件(最決平成16年3月22日刑集58巻3号187頁)の事実関係と決定文を見ました。そこで、判例はこの事案において、①密接性と②危険性の2つを要件として、第1行為の時点…

未遂犯と「実行に着手」

こんにちは~(ガクブル) どんどん冷え込んできましたねー(TT) 寒いのつらいです…(キーボード打つのが) ◆何が問題となっているのか 余談はさておき、今回のテーマは「未遂犯」です。論証的には「未遂犯の処罰根拠は法益侵害の現実的危険性を惹起したこと…

因果関係と客観的帰属2

◆判例の展開 前回は、判例の立場における因果関係の問題とは、結果の発生を理由として行為により重い違法評価を肯定できるかどうかの問題であると説明しました。したがって、因果関係論においては、結果の発生による行為の危険性の確証の関係、すなわち「危…

因果関係と客観的帰属

こんにちは~ 今日のテーマは、因果関係論です。 ◆何が問題となっているのか 行為、結果と並んで、因果関係は刑法総論における客観的構成要件要素のひとつです。ですが、因果関係の話に入る前に、そもそも犯罪において、なぜ「結果が」要求されるのかを考え…

いわゆる不真正不作為犯

こんにちは~ 今回は、刑法の解釈論の話に戻りまして、不作為犯を扱うことにします。 ◆何が問題となっているのか いわゆる不真正不作為犯の問題は、「実行行為」という構成要件要素の問題として位置付けられてきました。現在では、このような位置づけといい…

刑罰の起源

こんにちは~ 本日のテーマは、「刑罰の起源」です。考古学や人類学、人文思想等を飛び回ることで、かなりの分野を横断することになります。こういうのを一度やってみたかったんですよね~(学会じゃとても発表できません) ◆ロックアートと制裁 刑罰の起源…

刑法解釈と他者関係性

こんにちは~ 本日は、規範論のところで説明した「構造言語学(記号学)」を使った刑法解釈手法をご紹介したいと思います。この前の記事は、だいぶ大雑把で抽象的だったので、けっこうわかりにくかったかもしれません。そこで今回は、図解を多用しつつ、基本…

主観的違法要素

こんにちは~ まだ風邪が治らなくてつらいです。むしろ、どんどんひどくなってるかんじがします…(TT) 今年の風邪はしつこいですので、みなさんもお気を付けください… 例によって、この記事の位置づけです。 イントロダクション 第1回:モラリズムの排斥 第…

事前判断と事後判断

こんにちは~ タイトルがややこしくなってきたので、ここで一度まとめておきます。 イントロダクション 第1回:モラリズムの排斥 第2回:違法論の理論的根拠 第3回:事前判断と事後判断←この記事 補論1:規範概念 てなわけで、本日は、違法論第3回「事…

結果無価値論 VS 行為無価値論 入門(後編その1)

こんにちは~ 今日は、ようやく違法論の後編です。前編では、現在の結果無価値論と行為無価値論とでは、モラリズムの排斥という点において共通の認識を示しているということを説明しました。両立場とも、法益保護の思想に立脚しているのです。 記事がどうし…

「危険の現実化」の落とし穴

こんにちは~ 今回は、因果関係論のうち「危険の現実化」に焦点を当ててみたいと思います。 この記事を書いた当時、まさかここまで読まれるとは思いもしませんでした。それだけ学生が「危険の現実化」の理解に苦労しているということなのだろうと思います。 …

「規範」の正体と言語論革命

こんにちは~ 違法論の対立の「後編」に入る前に、「規範」についてもう少し理解を深めておきましょう。 「規範」は曖昧で、つかみどころがないと思う方は多いと思います。私もそう思いますし、実際のところ、研究者の間ではいまだに規範概念について共通の…

結果無価値論 VS 行為無価値論 入門(前編)

こんにちは~ みなさん、お元気ですか? 私は風邪で頭がフラフラです…(TT) 健康や体調の管理には十分に気を付けてくださいね! ◆2つの論点 「入門」とタイトルに書きましたが、今回は、違法論というへヴィなテーマです。前回は「『オレンジジュース』で考え…

「オレンジジュース」で考える違法性論

こんにちは~ 奇抜なタイトルですが、刑法上の結果無価値論と行為無価値論の対立を「オレンジジュース」で説明してみようと思います(いきなり意味不明)。今回は、カジュアルなかんじで話を進めていきたいと思います。 ◆イントロダクション:「オレンジジュ…

刑法総論判例インデックス

今回、ご紹介するのは、井田良・城下裕二編『刑法総論判例インデックス』(商事法務、2011年)です。個人的には、刑法総論の判例集の中ではダントツでおすすめです。見開きで収まる見易さ、持ち運びしやすい大きさ、ソフトカバー、適量で的確な解説などなど…

「判例」の読み方 入門編

こんにちは~。だいぶ寒くなってきましたね! というわけで、今回のテーマは、判例の読み方です。長文を反省して、なるべく簡潔に書いていきたいと思います(※下図は特に意味はありません)。 ◆判例とは 1.規範定立 まずは、次の判例を読んでみてください。…

あなたの組織がうまく回らない理由

こんにちは~ 本ブログは刑法専門のブログですでしたが、今回はビジネス関係のお話です。いえ、決して刑法と無関係ではないのですが、それは最後にお話しすることにしましょう。テーマは、「あなたの組織がうまく回らない理由」です。簡単に言えば、スタート…

交通事故に刑事罰を科すべきか

こんにちは~ 本日は、交通事故の話です。以前に書いた記事「犯罪って増えてるの?」では、犯罪統計を読むことの難しさを説明しました。今回も犯罪統計が出てきますので、批判的に読んでみてください。なお、犯罪白書掲載のグラフには余計なデータが入ってい…

高橋則夫 刑法総論

今回、ご紹介するのは、高橋先生の『刑法総論 第2版』(成文堂、2013年)です~ 比較的新しい基本書です。 刑法総論 作者: 高橋則夫 出版社/メーカー: 成文堂 発売日: 2013/10 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ◆位置づけ 分量:中~多(570頁…

山口厚 刑法総論 第2版

※第3版が出ました。現在、それを読んでいるところなので、読み終わったら記事を改訂します。第3版を少し読んだ限りでは、どうも山口先生は犯罪論体系自体を大きく変更するみたいです。 今回、ご紹介するのは、山口先生の『刑法総論 第2版』(有斐閣、2007…

佐伯仁志 刑法総論の考え方・楽しみ方

今回、ご紹介するのは佐伯先生の『刑法総論の考え方・楽しみ方』(有斐閣、2013年)です。刑法総論の全範囲を網羅していないので基本書とは言えませんが、罪数論や刑罰論以外はだいたい書いてあります。 後述しますが、この佐伯先生の本は、公平性や正確性と…

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