緋色の7年間

制約を原動力に。法律事務所の弁護士と大手企業の法務担当者が、時に制約と闘い、時に制約を迂回していきます。

高橋則夫 刑法総論

今回、ご紹介するのは、高橋先生の『刑法総論 第2版』(成文堂、2013年)です~ 比較的新しい基本書です。

刑法総論

刑法総論

 

◆位置づけ

  • 分量:中~多(570頁)
  • カバー:ハード
  • 体系:行為無価値論

◆特徴

高橋先生の体系は、規範論ベースです。行為規範と制裁規範という2つの規範概念から体系が構築されています。

行為規範概念について、本書は、法益の保護を目的とすると理解しているので井田先生にかなり近い考え方です。もっとも、高橋先生のほうの行為規範概念は、もっぱら抽象的です。この点で、具体化された行為規範「も」考える井田先生とは異なっています。このことは、錯誤論等の帰結に影響してきます。

ちなみに、高橋先生も井田先生も、ドイツ刑法学の権威の著書(クラウス・ロクシン『刑法における責任と予防』(成文堂、1984年)?)の翻訳をしているのを発見したので、おそらく思想潮流的には似たような系統なのだと思われます。

本書は、行為規範に加えて制裁規範を定立していますが、この制裁規範概念は、ロクシンの「答責性」という犯罪論の第3カテゴリー(※不法構成要件・責任・答責性の3つ)と類似しています。おそらくは、答責性段階で刑事政策的原理が考慮されるのを参考に、制裁規範概念には、従来の予防的な刑罰論に加えて修復的司法などの共同体主義的観点等を組み込んだものと思われます(※あくまでも個人的な推測です)

要するに、本書の理論的立場は、自律的個人だけでなく共同体の価値もそれなりに考慮するということです。難しく紹介しすぎたような気がしますが、本書自体は、とても簡潔で明瞭な記載ですので、学生でも普通に読めます。

また、本書の特徴は、比較的新しい議論も載っているというところでしょうか。「一連の行為論」や「量的過剰」の問題についても、ほかの基本書と比べて紙幅が割かれて書かれています。因果関係論も、いわゆる「客観的帰属論」です。このあたりは、試験対策上、参考になるかと思われます。

刑法総論は、いろいろな考え方があるので、自分の価値観に近いものを選びましょう~

 

▼刑法総論の基本書については、こちらも併せてお読みください。

 

▼行為規範と制裁規範は、こんなイメージでしょうか…?

 

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