緋色の7年間

制約を原動力に。法律事務所の弁護士と大手企業の法務担当者が、時に制約と闘い、時に制約を迂回していきます。

情報雑感

こんにちは〜

本日のテーマは「情報」です。概念が広すぎる気もしますので、馴染みのある領域に話を限っていきたいと思います。

情報とは、不確実性を減ずるものと定義されます。

現代資本主義社会では、各々が不完全で断片的な情報をもっており、その情報格差(市場の歪み)の是正=情報提供に対してプレミアム(対価)が支払われることで、互恵的な一般交換の円環が維持されています。この市場の歪みの是正をアービトラージ裁定取引)と呼んでおり、情報を持っている人間にカネが流れ込む仕組みになっています。要するに、情報=カネ。マネーの所在は情報格差の帰結です。理論上は。

しばしば相対的貧困問題で家庭単位の「経済格差」が注目されますが、これは端的に言って間違いであり、正しくは家庭単位の「情報格差」が問題の本質です。経済格差は結果であって原因ではありません。カネがなくても情報がありさえすれば、カネはいくらでも手に入ります。逆に、情報がなければ低賃金労働のループ(通称「ラットレース」)から抜けられなくなります。また、国民の所得を金銭の形で再分配してもファイナンシャル・リテラシーなどがない状態では何の解決にもなりません。この意味では、ベーシック・インカム負の所得税も、それだけでは机上論の域を出ません。実際上は、別種の政策的配慮がどうしても必要です。

いわゆる「意識高い系」で、かつ、富裕層出身者(ここでは、中学・高校は私立!有名大学出身!みたいな人を想定するものとする。)が「貧困問題に取り組んでいる私ステキ」のイメージで実際に貧困問題に取り組むと、目の前の現実に心が折られます。貧困問題において、よくある「助けたい人イメージ」は「田舎に住んでいて家庭は貧しいけれど質素倹約で真面目に仕事を取り組んでいる人」ってところですかね。「家庭にお金がなくてコンピュータが買えない子供たち」とか。しかし、そのイメージは不適切であり、実際には「生活がだらしなく浪費家で仕事も不真面目で場合によっては恒常的なDV・ネグレクトが行なわれているような同情も寄せられない家庭」とか「そういう家庭に育った不良な子供」がほとんどです。なぜならば、彼ら・彼女らには生活に必要な情報や仕事に必要な情報、あるいはその基礎となる情報が与えられていないからです。お金がないのではなく、情報がないのです。

これを「自己責任」と呼ぶのであればそうなのでしょうが、私としては、最低限の情報も満足に与えられないような環境であったとすれば、意思決定とその責任の前提を欠くと考えますし、貧困問題に対する無理解だと思います。コミュニティが偏るほど、このような情報の偏りに気がつかなくなります。既に情報を持っている人の世界観と持っていない人の世界観とはまったく異なるものであり、前者も後者もお互いに理解しにくいのです。特に情報を持つ者からすれば、持たない者に対して「なんでこの程度のこともわからないの?」という感想を抱きがちです(法律家の悪口率が高い理由)

ここで情報がないのであれば情報を自ら得られるように行動すればよいという指摘もありえますが、自分に情報がないとどうしてわかるのでしょうか? 我々は実際には世の中のことをほとんど何も知らないはずです。置かれた経済状態はあまり関係がありません。たとえば、私は某国際人権団体につま先を突っ込んだこともありますけれど、中の人たちの経済感覚とかアンダーグラウンドに対する理解とかギャップは凄まじいですよ? 途上国の貧困問題とかは知っていても、国内の貧困問題が身近にあるということをほぼ何も知らなかったりします。いや非の打ち所がないくらい人格も能力もついでに容姿・身なりも素晴らしい方々なんですよ? でも私には違和感がありました。皆様、経歴の同質性が異常に高く、何かものすごく複雑な気分になりました。たぶん正確に表現すれば「偏ってるな」なのかもしれません。もしかしたら、あの人たちはこの先も永久に気づくことはないのかもしれません。要するに、情報の偏りは家族とか学校とか職場とかのコミュニティに依存するのです。必ずしも自分でどうこうできる問題ではありません。私もきっと自分が偏っているのに気がつかなくて、そして自分だけではどうにもできないんだと思います。

こうして、情報の偏りの是正という観点から、多様性って大切だね、みたいな話の流れになっていくわけです。ところが、現実には価値観の異なる人同士で争いあい、価値観が似通った人たちで固まるような世の中です。どれだけ正当性を装っても、みんな心の底じゃ異なる価値観を受け容れるつもりなんかないんですよ。知らないものはこわいし。採用面接がいい証拠だよね。

ほんと、どうするのがいいのかねぇ…(手詰まり感)

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