症拠手記

法学的実践知を綴ったもの。概念の遡及的変更を繰り返す通時的な読み物としてお楽しみください。

法学における「定義」

えーと、これから予備試験に向けて勉強をするという方からメールが届きまして、一般論として「定義」がどの部分のことを言っているのかわからないという趣旨の質問を頂きました。

わたしは予備校教師ではないので試験絡みの法律学習相談は受けていないですし、どちらかというとアンチ試験至上主義なので試験のことはあまり考えたくないのですが、とりあえず素朴でまっとうな疑問だったので、この場でとりあげることにしました。

結論を申し上げますと、よくわかりません。

「定義」は、「Aとは、Bをいう。」のBの部分です。「Aとは、Bのことである。」、「Aとは、Bを指す。」、「Aは、Bを意味する。」などといった言い回しが用いられます。たとえば、教科書・基本書・コンメンタールなどでは「『暴行』とは、他人に向けられた有形力の行使をいう。」という記載が考えられるところです。

ここでいう「有形力の行使」が「暴行」概念の定義といえば定義なのですが、判例などでは「物理的勢力の発揮」とか表現されたりもします。表現は異なりますが「有形力の行使」も「物理的勢力の発揮」も意味内容は同じです(そう言い切ってよいのかは実際のところよくわかりませんが)。言っている内容が同じことであれば、表現が異なっていたとしても構わないのです。ただ、少しでも表現が異なると、意味も異なると考えるほうが自然かもしれません。上の「暴行」の定義のケースでは、とりあげた判例が古いので、単に時代による言葉遣いの違いの問題に過ぎないと思われます(たぶん)。ですから、表現が異なっていても意味は同じであると考えてよいと判断できます(本当にそうなのかはわからない)。

日本の場合には、「暴行」などの条文の文言について、主として書籍がその意味を上のような形で記載しています。いや、記載していないこともあります。定義をきっちり記載しているほうが堅実な書籍であるといえます。定義が条文の中に存在することも、もちろんあります。たとえば、「B(以下「A」という。)」といった形で定義が記載してあります。戦後(だったっけ?)に制定された法律では、法律の目的規定の次くらい(第2条とか)に定義規定が置かれていることがほとんどです。たとえば、何かの法律の2条5号に定義規定が置かれているとすると、「五 A Bをいう。」と記載されているはずです。条文に定義があれば条文を見ればわかります。何かを論述する際には条文番号等を引用することになるでしょう。条文に定義がないと、書籍や判例などで上のような形の定義部分を見つけ出し、ひたすら覚えることを強いられます(しんどい)

で、問題は「定義」と「解釈されたもの」との違いですが、よくわからないです。さっぱりわからない。定義のほうは、解釈の余地なく当然のものとして扱われるような言葉の意味内容といったイメージです。ですから、定義を述べる際には、理由付けは不要です。そうなるとしか言えないからです(それが本当かどうかはわからない)。これに対して、解釈によって展開された規範は、解釈過程、つまりなぜそういう解釈をしたのかという理由を述べる必要があります。裏を返せば、解釈されたものは、当該文言について別の意味内容も考えられるということです。そういうわけで、結局のところ、感覚的にというか共同主観的に意味内容が固定されているかどうかで区別せざるを得ないところがあるように思われます。

最後にひとつ、これから法律を学ぼうとするのであれば、ある程度基礎ができるまで(つまり情報の真偽を検証可能な程度に技能が身につくまで)ネットの情報を参考にしてはいけません。たとえば、このブログを信用してはいけないのです。

信じるな、疑え。

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