今回ご紹介するのは、リーガル・クエストシリーズの『刑法総論 第2版』(有斐閣、2012年)です。なぜ同書を一番はじめにご紹介するのかといいますと、同シリーズが建前上、スタンダードテキストを謳っているからで、これを基準に以降の基本書を紹介してみようかと考えたからです。
◆位置づけ
- 分量:少~中(488頁)
- カバー:ソフト
- 体系:結果無価値論(山口説)
◆特徴
共著ですが、考え方は山口先生の採用するタイプの強硬な結果無価値論で一貫しています(山口説においては、故意・過失は構成要件要素ではありませんが、本書では、教育的配慮から、故意・過失を構成要件段階で論じています)。
「違法性については結果無価値論が採用されるべきである。〔…〕この見地からは、故意、過失は違法性の要素(主観的違法要素)ではなく、責任の要素にすぎないことになる」(同書27頁)、「故意・過失を構成要件要素とすることの意義は、それほど大きくない」(同書117頁)
特筆すべきは、かなり最新の学説まで載っているところでしょうか。少々最新すぎて、支持が固まっていないようなものも含まれていますが、近時の学説の動向をそこそこ簡潔に記述している点で、類書にはない価値があります。ただ、最新の学説をフォローするのであれば、脚注をつけたほうがよかったのではないかと思われます。
また、教科書にしては、かなり濃淡のある記述になっています。たとえば、刑罰論の記述は極端に少なく、他方で、共同正犯における正犯性の要件については、具体的な考慮要素を詳細に記載するなどしています。このような意味では、同書はとても資格試験向きです。
▼刑法総論の基本書については、こちらも併せてお読みください。
▼基本書の使い方については、こちらをお読みください。