今回、ご紹介するのは佐伯先生の『刑法総論の考え方・楽しみ方』(有斐閣、2013年)です。刑法総論の全範囲を網羅していないので基本書とは言えませんが、罪数論や刑罰論以外はだいたい書いてあります。
後述しますが、この佐伯先生の本は、公平性や正確性という点で、数ある刑法の書籍の中でも圧倒的に優れていると思います。私の好きな本のひとつです。
◆位置づけ
- 分量:少~中(445頁)
- カバー:ソフト
- 体系:結果無価値論
◆特徴
佐伯先生は結果無価値論の立場ですが、本書ではそれがあまり前面に出ていません。もちろん自説の記述はありますが、さらっと「こんなかんじでもいいんじゃない?」「それは無理があるよね?」という雰囲気で柔軟に論じられています(分野ごとにかなり濃淡があるような気もします)。そして、そこに至るまでの対立する見解(とりわけ山口説と井田説)の紹介や検討が極めて公平で正確なのです。これが本書の最大の魅力です。
判例の射程等についても、参考にできる部分が多いように思われます。文章も読みやすいです。副読本を購入するのならば、これがいいと思います。
▼刑法総論の基本書については、こちらも併せてお読みください。