緋色の7年間

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司法試験「採点実感等に関する意見」のまとめ(刑法平成20~25年)前編

◆「採点実感等に関する意見」について

こんにちは~

今回は、司法試験のお話です。現行の司法試験制度では「出題趣旨」とは別に「採点実感等に関する意見(以下、「採点実感」)なるものが公表されています。平成26年11月26日現在で、平成20年から25年のまでの採点実感が公表されていまして、受験生としてはこれを読んで試験対策をしましょうという話になるわけです(なお、採点実感の本来の想定読者は指導側である法科大学院関係者なのですが)

で、採点実感を読んでまとめてみましょうというのが、この記事の趣旨です。

さっそく読んでみました。

 

長い。もう読みたくない…(しかも年々、文章量が増えてるぅうう)

 

もっと読みやすく論点体系で問題の個所を示すとか、定量的に間違いやすさを算出するとかしてくれればいいんですけどね…

えーと、ここでは、字が汚いとか、罪数処理を忘れちゃった☆とかはレベルが低すぎるので抜粋しません(私もよくやったのですが)。この記事では、刑法の内容に限ってまとめることを試みたいと思います。

※本ブログでは、「採点実感等に関する意見」を引用・参照するにあたって略記をします。たとえば、平成25年の採点実感の20頁であれば、「H25・20頁」と表記することにします。

◆総評のようなもの

「採点に当たっては〔…〕罪責に関する結論部分だけではなく,その結論に至る思考過程の論述を重視するものと」するらしいです(H20・16頁、H21・18頁、H22・20頁、H24・23頁)。しかし、直近の採点実感では、このようなプロセス重視をあまり強調せず、「①刑法総論・各論の基本的な知識と諸論点についての理解の有無・程度,②事実関係を的確に分析・評価し,具体的事実に法規範を適用する能力,③結論の具体的妥当性,④その結論に至るまでの法的思考過程の論理性を総合的に評価することを基本方針として採点に当たった」〔番号・強調引用者〕(H25・25頁)としています。

  1. 基本的な知識と諸論点についての理解の有無・程度(知識)
  2. 事実関係を的確に分析・評価し、具体的事実に法規範を適用する能力(事案分析)
  3. 結論の具体的妥当性(結論)
  4. その結論に至るまでの法的思考過程の論理性(論理)

てなわけで、①知識、②事案分析、③結論、④論理の4つが司法試験的に重要です!(当たり前のことしか言ってない!)

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◆間違えやすいところはどこか

では、どこが最も間違いやすいのか。最も間違いやすいのは②の事案分析みたいです。たとえば、「理論的な根拠や検討すべき要素を具体的に示しつつ,必要かつ十分な事実を抽出して当てはめる」(H20・16頁)といった作業の重要性は繰り返し繰り返し指摘されています(具体的な話は次回)。また、「事実認定上又は法解釈上の重要な論点は手厚く論ずる一方で,必ずしも重要でない箇所では簡潔に論述するなど,いわゆる「メリハリ」を付ける工夫も必要となろう」(H23・24頁)という点も指摘されています。このあたりは経験に基づく感覚的な要素が強い気もします。

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で、次に間違いが多いのは、①の知識です。特に刑法各論の保護責任者遺棄致死罪、横領罪、背任罪、放火罪、文書偽造罪、業務~罪あたりが地雷原です。

各考査委員から「総論に比較して各論の学習が不足しているのではないか。」との感想が複数寄せられた。また,〔…〕「総論に比較して各論の問題点について的確に論述する能力が欠けているのではないか。」との感想や「各犯罪類型に該当する典型的事案をイメージできていないのではないか。」との感想も寄せられている。(H24・26頁)

…要するに、各論の勉強が足らない(私も耳が痛いところです)

さらには、こんなことも書いてあります。「答案を書く際には,常に,論じようとしている論点が体系上どこに位置付けられるのかを意識しつつ,検討の順序にも十分に注意して論理的に論述することが必要である」〔強調引用者〕(H25・28頁)。このブログでも、そろそろ各論に入ったほうがいいんでしょうか…(※対策記事を作りました→「刑法各論と構成要件要素」参照)

次回は、①の事案分析の具体的な話に入ります~

 

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