緋色の7年間

制約を原動力に。法律事務所の弁護士と大手企業の法務担当者が、時に制約と闘い、時に制約を迂回していきます。

特殊詐欺

こんにちは~

お気に入りの手袋をなくして悲しんでいるところです…(TT) 手袋とかマフラーってけっこう電車に置き忘れたりしますので、みなさんもどうぞお気を付けください…

さて、今回のテーマは、「特殊詐欺」です。「特殊」というからには、普通の詐欺とは異なるところがあります。しかしながら、特殊とはいえ、実務では頻繁に問題となりますし、実務で必要性が高まっている以上は当然に司法試験等でも問われることになります。具体的には、詐欺罪(刑法246条1項ないし2項)において、特殊詐欺の「特殊性」を、いかに事実認定で考慮するかが重要になってきます

特殊詐欺とは、警察庁の表現を用いると、「被害者に電話をかけるなどして対面することなく欺もうし、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(現金等を脅し取る恐喝も含む。)の総称」です。かつては「振り込め詐欺」と呼ばれていたカテゴリーですが、時代の変遷によってその内容が多様化してきたのです。

特殊詐欺の特徴をあげると、次の3つです。

  1. 対面でない欺罔行為
  2. 預貯金口座への振込み
  3. 被害者が不特定多数(組織的犯罪)

電話やインターネットを介せば対面せずにすむので、犯人側にとっては接触の機会を減らし、欺罔が見破られないようにすると同時に、逮捕の危険を軽減するメリットがあります。

預貯金口座への振込みにするのも同様のメリットがあるからです。もちろん口座には利用者名が登録されているわけですが、お金に困っている人から口座の名義を買い取ればこの点を回避することも可能です(もちろんこの行為も違法ですが)

また、口座に入金する以上は引き出す瞬間があり、その時は犯人を防犯カメラに記録できる機会となるわけですが、大学生や高校生をアルバイトに雇って「出し子」にすればこの点も回避できてしまいます(これに関しては、「既遂時期」や「財物の移転」、「共犯」などの点で問題となります)

犯人は組織的・計画的に動いていると思われますので、相手にするとなると非常に厄介です。ただ、検挙率もあがっているのが心強いところではあります。

これらの特殊詐欺の特徴は、そのまま事実認定・評価で問題となってきます(試験的に言えば、これらの点について、事実を踏まえて丁寧に考慮し、評価できるかどうかがポイントです。たとえば、「オレオレといって相手を欺罔しているから詐欺罪が成立する」と答案に書くとアウトです)。

具体的な特殊詐欺の類型は、①オレオレ詐欺、②架空請求詐欺、③融資保証金詐欺、④還付金等詐欺などです。試験で事例問題として出されるのはたいていはこれらの類型のどれかですし、現実の問題に対処するためにもこれら4つの基本的な類型について論じられるようにしておくべきでしょう。上の4つの類型は、ニュースでよく聞く単語ばかりだと思いますが、実際に、これらの特殊詐欺は急増中なのです。

刑法犯の認知件数が平成14年をピークに一貫して減少しているなど、犯罪情勢には一定の改善がみられるほか、殺人や強盗を始めとした重要犯罪の検挙率も14年以降改善傾向にあります。一方、国民が治安への不安を感じやすい犯罪の代表である窃盗犯の検挙件数は、過去20年間で大きく落ち込んでいるほか、振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺の被害総額は過去最高となるなど、警察捜査は大きな課題にも直面しています。

平成26年警察白書概要1頁

犯罪組織にとっては、高齢社会の到来は、犯罪のシルバーマーケットの拡大を意味しますので、今後も手口が巧妙化することが容易に予想できるところです。もっとも、法律家としては、既に起こってしまった事件を扱うことしかできませんので、歯がゆいところではあります…

それではまた~

 

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