こんにちは~
本日のテーマは、「知的財産戦略本部」についてです。
「知的財産戦略本部」とは、「知的財産」(知財基2条1項参照)の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進するため、内閣に設置された行政機関です(知財基24条)。結論から言えば、知的財産戦略本部は、毎年「推進計画」(知財基23条1項)を作成し、法整備の土壌を作り出して日本の知的財産の積極的な活用等を促していくぜよ!という組織です。と言っても、たぶんこれだけでは理解してもらえないので(私が理解できなかったので)、国家行政組織の構造とともにご説明いたしましょう(下図参照)。
行政組織の機関設計って複雑ですね。ちょっと系統が錯綜しすぎじゃないですかね…
1 知的財産戦略本部の法的位置づけ
はじめに、一応、基本的な概念について確認しておきましょう。まず「行政機関」という概念ですが、これは「国(又は公共団体)」という行政主体(権利義務関係の帰属主体)を構成するパーツのようなものだと思ってください。以下に述べる組織は、すべて行政機関です。厄介なのは、法文上、各行政機関同士は論理的に重複していませんが、その行政機関を現実に動かしている生身の人間のほうはものすごーく重複しているという点です。分身でもしない限り人間が物理的にそんなに役職を兼ねられるわけがないので、つまるところ、名目的なものがいくつもあるということです。名義と実際に行為している人とが異なる場合があるので、この点にご留意ください。
そこで、行政組織の大枠ですが、これは憲法に基づきます。現行憲法の権力分立原理により行政権は内閣に属し(憲65条)、内閣は憲法に定められた行政活動を行います(憲73条、内1条1項)。内閣は、内閣総理大臣及び国務大臣で組織され(内2条1項)、内閣の職権の発動は閣議によります(内4条1項)。要するに、内閣というのは、内閣総理大臣の意思決定によってトップダウンで動く組織なのではなく会議体なのです。トップダウン構造になっているのは、国務大臣よりも下のレイヤーです。ものすごくざっくり言えば、(行)政府の頭は内閣という会議体であり、その会議体には内閣官房という会議体の秘書部門みたいなものが存在し(内12条1項)、会議体のメンバーである各国務大臣の下にタテ割りの官僚ピラミッドがあって、さらに、タテ割りだと色々と面倒なのでヨコ割りの内閣府が存在する(内閣府2条)という「イメージ」です。イメージなので、本当はちょっと違うのですが、とりあえずそういうものだと思っておいてください(なお、憲法72条との関係につき、最大判平成7年2月22日刑集49巻2号1頁【ロッキード事件】参照)。正直なところ、私自身、内閣官房と内閣府の役割分担がよくわからなかったりします。私がわからないのですから、皆様もわからなくて大丈夫です(てきとう)。で、知的財産戦略本部は、法的には内閣官房や内閣府と同格の機関ということになります。もっとも、本部の活動の多くは、知的財産基本法33条に基づく政令として発せられた知的財産戦略本部令(平15政令45)によって設置された専門調査会や委員会等の活動です。なんでそれぞれの庶務を取り扱うのが異なる機関なのか私にはさっぱりです…
2 知的財産戦略本部とは
そもそも、知的財産基本法(平14法122)は、具体的な権利義務に関して一切定めておらず、知的財産及び知的財産権に関する具体的な規定は個別法に委ねられています。たとえば、発明は特許法(昭34法121)に、著作物は著作権法(昭45法48)に、意匠(インダストリアル・デザイン)は意匠法(昭35法125)に定めがあることなどはご存知かと思います。それでは、なぜこの法律があるのかというと、それは予算配分や政策立案のための前振りが必要だからです。そして、知的財産基本法の中に定めのある知的財産戦略本部は、この文脈において必要とされる役割を果たすことになります。すなわち、知的財産戦略本部には、各省庁の垣根を超えた政策立案のための横断的組織としての役割が与えられているわけです。「知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進する」(知財基24条)という本部の設置目的は、このような意味なのです。
そして、前述のように、知的財産戦略本部の実質的な活動は、専門調査会や委員会等の活動が中心となっています。そういうわけで、毎年、上記の目的のために「有識者」の皆様が知的財産戦略本部名義で「推進計画」をPDCAしているのです。その中身(推進計画の作成・目標達成状況の調査結果)は、インターネットなどで公表しなければならないことになっていますので(知財基23条4項・5項。たとえば、「知的財産推進計画2016」参照)、それを私たちは見ることができます。だいたい今後の立法の方向性がわかったり、わからなかったりします。
こんなかんじです。
▼関連記事