◆何が問題となっているのか
こんにちは~
本格的に夏になりましたね。外気温の変化だけでなく、クーラーのかかりすぎに気を付けるなど、体調管理を万全にして仕事や勉強に取り組んでいきましょう~
本日のテーマは、「成果物」です。
言うまでもなく「成果物」とは、自分が仕事をした結果として生じた書面や口述などのことです。たとえば、法律家の例で言えば、裁判所(の書記官)に送達してもらう訴状や、取締役会に提出する意見書、法律相談でのアドバイス、大学での講義などのことをいいます。学生の方であれば、「答案」や「レポート」が成果物ということになるでしょう。もう少し商業よりに一般化して言えば、プロダクトとかサービスとかのことです。これらは「アウトプット」と呼ばれたりもします。
他方で、アウトプットをするためには、必然的にそのために必要な情報を収集し、研究しなければなりません。たとえば、本を読んでみたり、ネットで検索してみたり、誰かに聞いてみたりすることです。これらの例は二次的情報で、比較的お手軽なところがメリットですが、正確性や独自性に欠ける面があります。やはり、正確な情報や独自の情報を得るためには、自分で実験・実行してみたりしてトライ&エラーで経験するのが一番です。これは、「インプット」と呼ばれたりします。
そこで、私たちが抱える問題は、インプットとアウトプットを組み合わせることでいかにして成果物の品質を向上させられるかです。
◆ではどうすればいいのか
成果物の品質は、インプットに大きく依存します。近時の人工知能技術の発展に示唆されるように、情報量が膨大であるほどアウトプットにおいて優位に立つことができます(「AI(人工知能)と倫理と法」参照)。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、人工知能技術開発を進める Alphabet (旧Google) や Apple といった米資本企業は情報を持っている会社を買収し続けています。この分野で日本は大きく出遅れており、政府の知的財産戦略本部(「知的財産戦略本部ってなんだ」参照)などでは、もはや日系企業が情報を取得することにおいて優位に立つことを諦め、既存のデータベースとの組み合わせで戦おうという流れになっているようです。要するに、「第一回戦」における事実上の敗北です。
よくできる学生の方やビジネスパーソンの中には「アウトプット」を重要視される方がいらっしゃいますが、一般論としては、そもそもインプットが十分でなければアウトプットされる成果物の品質は悪くなってしまいます。おそらく彼・彼女らがアウトプットを重視しているのは、文字通りアウトプット自体を重視しているのではなく、インプット時の目的志向性の獲得にアウトプットを利用しているにすぎないものと思われます。インプットに目的志向性を要するのは、そうでなければ、必要な情報とそうでない情報とを選別できないからです。何にとって必要なのか、何にとって重要なのかがわからなくなってしまうのです。そして、目的の明確化により適切にインプットが進む結果として、アウトプットされる成果物の品質が向上するのです。「アウトプットし続ければ成果物の品質が向上する」といった単純な論理ではないことに注意が必要です。
以上のことから考えると、要するに、①目的の設定と②その目的を達成するために必要なインプットさえできれば、あとは③アウトプットの訓練によって、成果物の品質を向上させることができます。そこで、目的の設定ですが、これは、想定される成果物を提供する相手方の需要によって決まります。つまり、相手方の「需要」という主観によって成果物の品質が評価されることになるのであり、客観的な成果物自体に品質評価上の意味はほとんどありません。
よく考えると当たり前ですが、成果物の供給要素を固定すれば、成果物の市場価格は需要によって決まります。実のところ、自分がどう思うのかは、目的の設定と関係がないということです。自分が相手から何を求められているのかを理解し、それを目的に設定するのです。ドラッカーの「あなたは何によって憶えられたいか」という問いは、厳密には「あなたは何になりたいか」という問いではありません。他者性・外部性を付帯した問いなのです。
そうすると、成果物を提供する相手方(顧客/クライアント)が異なれば、同じ成果物でもまったく評価が変わってしまうわけです。大学教授に授業が下手な人が多いのは、自分のクライアントが誰なのかを理解していないからです。大学教授のクライアントは、大学であって、学界ではありません。学界でウケても、学生にウケるわけではありません。それは言ってみれば、金融に無知な人に仕組債を売りつけるようなものであり、率直に言って悪質な行為です。ビジネスパーソンならクライアントを間違えるようなことはしないとお思いになるかもしれませんが、普通のサラリーマンのクライアントって「自社」ですからね。自社の取引先ではありません。雇用契約を締結している相手方当事者は自社だからです。
こうして、相手方の需要に応じて目的が適切に設定されると、あとはわりと自分の試行錯誤でどうとでもなります。突き詰めると、成果物の品質は、最初の目的の設定の仕方にかかっているということなのです。
それでは~
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