緋色の7年間

制約を原動力に。法律事務所の弁護士と大手企業の法務担当者が、時に制約と闘い、時に制約を迂回していきます。

書籍いろいろ

こんにちは〜

本日のテーマは「書籍」です。

「書籍」は、本質的には、有体物に視覚的に読むことができる形で記載された文字列や図形、つまり情報です。情報源の一種ということになります。法学系の書籍は、判例集・判例解説やコンメンタールを除けば、だいたい次のように分類できます。

  1. 新書
  2. 入門書
  3. 教科書・基本書
  4. 論文集・体系書(学術系専門書)
  5. 実務書

本来は形式・実質のそれぞれの観点から分類すべきなのですが、現実には分類が難しかったので、諦めててきとうにまとめました。

えーと、ついでに「価格」を縦軸に、「具体性」を横軸にとると、次のようなイメージになります。

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プライシング(価格設定)の分析については、この記事で扱いません。ということで、横軸の具体性だけ取り出すと、

  1. 法律論(一般論)
  2. 法律論に基づいた個別論
  3. 実際のアクションのご提案

と、なります。

このブログは「1」に傾斜させています。砕けた雑な文章という点を除けば、学者・研究者の文章に近いと思います。教科書基本書は「1」と「2」の一部ですかね。学者・研究者は、「2」も「3」も書かないんじゃなくて書けないんです。書ける人もいるけど(このブログは書けないパターン)。初学者であれば、書いてある内容が抽象的でよくわからないとすれば、書いてるほうが悪いので、あまり気にしないほうがいいです。焦らず、入門書とか新書(日経、岩波ほか)とかビジネス書(金融業、不動産業、建設業、システム開発業あたりの入門書)とか他の資格テキスト中小企業診断士、FPほか)とか具体的なほうから入っていきましょう。私もそうしました。特に民事系と個別行政法規の領域は、具体的な話がないと理解不能なので気をつけてください。もっとも、試験に限って言えば、内容を理解していなくとも論証パターンで押し切れます(本人は理解しているとおっしゃられるわけですが)。抽象的な理論が不要ということではないので、最終的には論文集体系書まで読めるようにする必要があるかもしれないです。仮に読めないとすると、ひたすら断片的な知識を詰め込むしかなくなります。暗記能力のある若いうちはそれで問題ないのかもしれませんが、年をとると死ぬので。私、年とってないですけど暗記能力がダメダメで死んだので。

実務家の方々が書く実務書は「2」と「3」の一部です。純粋に「3」を書かないのは、そもそも個別具体的なケースを見ないと書けないというのと、書籍やブログ自体が事務所の宣伝・営業を目的としているからです。要するに、一番重要な部分はカネを払えというわけです。そういう戦略です。訴訟や法律相談などで依頼してもらえる文章にすることが優先されます。「1」は意図的にすっ飛ばしている場合もありますが、よくわかってないというのが本音ではないかと思われます。実務家の書く内容の傾向として断片化された無味乾燥なものが多いと思いませんか? あと、目次や記述がどことなくだらだらしているかんじしません?(このブログに言われたくないと思うけどさ) 建前上は、結論や事実を淡々と書いていくのが実務家だ!ということらしいのですが、別に体系性や理論部分と両立するので大嘘です。そんなこと知らなくても仕事はできる!などと、わからないことを正当化したいだけです。弁護士ではなく司法書士行政書士の方々が書くビジネス法務系の書籍を読めば明らかにそうだとわかります。ちなみに、ちゃんと理論の部分にも触れている実務書のほうが売れます。読後に納得「感」もあるし、ゆえに記憶にも残るし、アマゾンレビューにも反映されやすいし。

えーと、そういうわけで何が言いたいのかというと、「1」〜「3」のバランスの良い書籍を望みます。本当に。

出版社さん、編集者さん、諸先生方、よろしくお願いしまーす!!

◆おまけ(という名の蛇足)

しばしば自己啓発本とかビジネス本とかを叩いている実務家とか教授とかいらっしゃますけれど、それはそれなりの冊数を読んだ上で言っているんですかね? なぜか自己啓発=経済的成功という思い込みもあるみたいですけど(それはFXとかの投機本とかマネー本とかの話だから)。私が読んだ限りでは、ピンキリなのは事実です。しかし、むしろ、この業界に一番足りていないことが書かれていることも多くあります。

たとえば、自己啓発本の元祖、デール・カーネギーの『人を動かす』では、「悪口を言うな」といったことが指摘されており、具体的なケースに基づいてその影響が論じてあったりします。「悪口を言うな」なんて、別に当たり前のことですよ? でも、そういった当たり前のことができていない実務家・教授って数え切れないくらい思い当たるんですけど。皆様はどうですか? そういう人、身近にいません?

そもそも「自己啓発本」というのは人間関係の改善を目的とするカテゴリーです。金持ちを目指そう!なんて浅はかなことは考えません(だからそれはマネー本だって)。この業界に人間関係に長けている人ってそんなにいますかね? むしろ人間関係とか気にしないタイプの人たちですよね。就活から逃げた社会不適合者みたいな人たちですよね(違う)。しかも「弁護士にはそういう人のほうが向いてる」とかよくわからない正当化しますよね。いや、職務の適性と人間関係の良好さとは両立するからね?

というわけで、自己啓発本は馬鹿にできません。読んでから個別に中身をご批判ください、と思うのですよ。

◆おまけ2(という名のさらなる蛇足)

基本的に自己啓発本・ビジネス書を叩きたがる人たちというのは自己顕示欲が動機です。「そんなの読んで意味あるの〜」みたいなことを言いたいだけで、特に深いことは考えていません(私も言ったことがあるのでわかります)。だって実際に読んでないし。類似のパターンとして、難解な法律書・哲学書を読んでるぞアピールというのがあります。だってなんかカッコイイし(※ただし本人主観)。男性の方がよくやる「俺すごいアピール」シリーズのひとつです。

あー、その心意気は買うので、できましたら『声と現象』とか『エクリ』あたりを読解できたら私に教えてくださいねー

 

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