緋色の7年間

制約を原動力に。法律事務所の弁護士と大手企業の法務担当者が、時に制約と闘い、時に制約を迂回していきます。

【感想】公道走行可能な電動キックボード ZERO9 に乗ってます。

■「電動キックボード」の法的性質

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法律のブログなので法的性質から入ります。電動キックボードとは、電動式のモーターによって駆動する車輪付きの板のことです(上写真参照)。道路交通法との関係では、電動キックボードは、「内閣府令で定める大きさ(0.60キロワット)以下の定格出力の原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車」に該当し、かつ、自転車、身体障害者用の車いす及び歩行補助車等には該当しないので、道路交通法上の原動機付自転車に該当すると解されます(道交法2条1項10号。平成14年11月警察庁交通局見解。つまり、電動キックボードに乗っている時は原動機付自転車、降りて押して歩いている時は歩行者です(道交法2条3項2号)。そして、電動キックボードに乗るか押して歩くかの物理的な切り替えは極めて容易なので、電動キックボードの利用においては「原付」と「歩行者」をスイッチしながら赤信号を回避して進み続けるという戦略をとることになります。

そう、俺たちの前には赤信号など存在しないのだ!!

■感想

電動キックボードを実際に購入し、利用してみた感想です。まだ最適な利用方法の模索段階というかんじですが。先に言ってくと、原付扱いなので、事前に役所でナンバープレートを取得し、ローソンで自賠責に加入し、Amazon でヘルメットを購入しています。

結論的には、路上で止まることが苦痛になる程度にめっちゃ便利です。快適に進み続けられます。最初は自転車の感覚が残っているので、自転車の移動ルートが頭に過ってどうすればいいか迷うかもしれませんが。

進み続けるためには、まず、電動キックボードの特性を把握する必要があります。電動キックボードの移動上の課題は、(1) 車輪の口径が小さく悪路に弱いこと、(2) 自動車の交通量の非常に多い大通りを走行するには危険であること、(3) バッテリーによる行動限界が存在することの3つです。(1) は ZERO9 の場合はタイヤの性質的にかなりの程度クリアしていますが、ほかの機種だと段差に引っかかったり滑ったりするようです。(2) について、電動キックボードは法的には原付と同じなので理論的には走行可能ですが、なんというか身の危険を感じるので走行したくない感があります。(3) のバッテリーについては容量的には長距離移動も可能なのですがうっかり充電し損ねることもあるので、手軽に利用するという点で現実的な行動範囲は理論値よりも後退します。あとは現時点では使ってて目立つことも特性ですね。

ここから導かれる帰結は、(1)' 晴天下の平坦な舗装された道路において、(2)' 危険な大通りを回避しつつ、(3)' 活動拠点から3~5km圏内での利用が推奨されるということです。特に (2)' について、ある程度は活動拠点周辺の路地を把握しておいたほうがよいかと思います。(3)' は自転車と同じくらいの推奨範囲です。

■自転車との比較

ここで極めて現実的なお話をしますね。

移動手段の候補は、電動キックボードのほかには「(電動)自転車」や「自動二輪(バイク)」が考えられるところです。しかし、後者は利用者のニーズ的な意味で実際問題として購入の考慮に入ってきません。というのも、移動利用のお手軽さが核心的なニーズだからです。また、電動キックボードの価格帯も数万円~10万円前後であり、高めの自転車と同じくらいです。そこで、購入検討にあたっては主として自転車との比較検討を行うことになります。

自転車と比較したときのメリットは、(x) 止まらずに進み続けることができること、(y) 自転車よりも乗り降りが容易であるにもかかわらず場合によっては最大時速40kmで走行できること、(z) 機体を自宅の玄関に格納可能であること(上写真参照)デメリットは (a) 原付と同じ扱いになるため横断歩道を青信号でも押して歩くことになったり柵の中の自転車も通れる路面を走行できないこと、(b) バイクや原付NGの駐輪場に停められないこと、(c) 出先での施錠、(d) ヘルメットの着用義務、(e) ナンバープレートの取得手続と自賠責の保険料や税金、(f) 充電の手間です。あと目立つ。

デメリットのうち (a)、(b)、(f) はそういうものなので単なる慣れの問題ではあります。(c) は機種によりますかね。(d) と (e) が本質的な気がします。というか、わたしは運転免許証を持っているので特に気になりませんでしたが、運転免許証を持っていないと乗れないというのもデメリットではありますね。

個人的には自転車よりも移動自体はラクな気がします。何と言いますか、社会がまだ電動キックボードに追いついていないので、そういう意味での利用時の「迷い」は生じるかもしれません。

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