緋色の7年間

制約を原動力に。法律事務所の弁護士と大手企業の法務担当者が、時に制約と闘い、時に制約を迂回していきます。

刑法

詐欺罪と重要事項性〜特にチケット転売行為について

こんにちは〜 本日のテーマは、詐欺罪(刑法246条)の「欺罔行為」です。約1年ぶりに刑法分野の論点です(刑法ブログだけど)。 どうでもいいんですけれど、この業界、他人の悪口を言う人(というか無駄にプライド高い人)が異常に多いので、関係者の発言は…

具体的な事案の想像って難しいよね

はじめてミディエイターをやってみて心が折れそうになっている今日のこの頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか? 人間の感情というのはたいへん厄介なもので、自分が合理的に考えてこれがよいと思っても当事者からすると望んでいないということが多々あります…

表をつくろう!――放火罪と賄賂罪を例に

◆「表」をつくる目的 こんにちは~ 本日のテーマは「表」です。たまに教科書・基本書に表が掲載されていたりしますが、実は、その表には大きく分けて2種類あります。 ひとつは「検索のため」に使われる場合の表です。表を辞書的に活用することが想定されて…

罪数論と刑訴法(概観)

こんにちは~ 本日は、前回の余波で、「罪数論」に(つま先だけ)突入します。罪数論と刑事訴訟法とがどうつながっているのか、ほんの少しだけつっこんでみます(つま先を)。 とりあえず司法試験刑事系第1問の採点実感では罪責検討の最後に罪数を落とさな…

公職選挙法と選挙運動のラビリンス

こんにちは~ 本日の学習テーマは、「公職選挙法」(昭28法100)です。 公選法違反の犯罪構成要件を一覧にしてざっくり解説しようと思ったのですが、諦めました。数が多すぎたからです。しかも、体系と呼べるほどの体系がなく、何の脈絡もなく大量の規定が置…

生命倫理と死生観とついでに幽霊

◆「生命倫理」のイメージ こんにちは~ 本日のテーマは、「生命倫理」です。 「生命倫理」というと、日本人の持つイメージは、外国の方が思い浮かべるのとちょっとずれる気がします。文献を読んでいても、そのあたりについてイマイチ話がかみ合っていない気…

自己責任と社会的責任

◆「自己責任」? こんにちは~ 本日のテーマは、「責任」です。 日本人によくみられる言説として、「その人が周りに迷惑をかけたのだからその人が責任を負うべきだ」というものがあります。また、誰かが不利益を受けると「それは自己責任だからしかたない。…

新論点「共謀の射程」

こんにちは~ 今回は、久しぶりに刑法のお話です(※本ブログは刑法専門のブログ)。テーマは「共謀の射程」です。 ◆何が問題となっているのか 共同正犯の本質は因果性の相互的補充・拡張及び正犯としての帰責であることから、共同正犯が認められるためには、…

「被害者なき犯罪」と道徳・社会倫理規範

◆何が問題となっているのか こんにちは~ 本日のテーマは、いわゆる「被害者なき犯罪」です。 個別具体的・直接的な被害者(法益主体)のいない風俗犯や経済犯などの犯罪類型を、「被害者なき犯罪/被害者のない犯罪」と総称することがあります。たとえば、…

『刑法実践演習』の感想

ここでいったん書籍紹介です。 なかなか面白い「判例付演習書」が出てきたので、紹介してみます。 刑法実践演習 作者: 甲斐克則,内山良雄,小田直樹,小名木明宏,神例康博,北川佳世子,島岡まな,杉本一敏,十河太朗,二本?誠,日山恵美,渡邊卓也 出版社/メーカー: …

「論証パターン」の作り方

こんにちは~ 今回のテーマは「論証パターンの作り方」です。ええ、「論証パターン」です。 法学は暗記の学問(というのがあるのか?)ではありませんが、「試験においては」暗記必須です。その場で条文を読んでイチから自分の頭で考えて解答すべき……なわけ…

危険の現実化のあてはめ(解説編)

こんにちは~ かなり暑くなってきましたね。最近になってカプチーノを自作できるようになったのですが、暑くなってしまったのでこんどは美味しいフローズンをどうやって作るか考えているところです。季節的に、突如雨が降ってきたりして、なかなか天候の変化…

危険の現実化のあてはめ(問題編)

こんにちは~ 本日は「危険の現実化のあてはめ」がテーマです。もう因果関係の問題は十分な気がするのですが、教えていると、まだまだ私の能力不足でわかってもらえていないみたいなので、ここで「補講」です。 繰り返しになりますが、因果関係論には深入り…

絶望の共犯論

こんにちは~ 過失犯後編で詰んだので、今回は共犯論です(え 一応、言い訳をしておきますと、過失犯は判例がわりと固まっている分野なので、新旧過失論の対立を扱っても深く踏み込む実益をあまり感じませんし、かといって予見可能性の程度や過失の標準の問…

リスク社会と過失犯(前編)

こんにちは~ 今回のテーマは「過失犯」です。 結論から申し上げますと、現在の判例・実務(と司法試験)においては、過失として「予見可能性に基づく結果回避義務の違反」の有無を検討すればよいことになっています。予見義務や結果回避可能性は、少なくと…

司法試験「採点実感等に関する意見」のまとめ(平成26年度版)各論編

こんにちは~ 刑法総論編に続きまして、今回は、後編の「刑法各論」の事案分析についてです。 考査委員からは「総論に比較して各論の問題点について的確に論述する能力が欠けているのではないか」との感想が寄せられています(H24・26頁)。また、「答案を…

司法試験「採点実感等に関する意見」のまとめ(平成26年度版)総論編

◆「採点実感等に関する意見」について こんにちは~ 今回は、司法試験の話です。 現行の司法試験制度では「出題趣旨」とは別に「採点実感等に関する意見」(以下、「採点実感」)なるものが公表されています。平成27年3月24日現在で、平成20年から26年までの…

マインド・コントロールと間接正犯(後編)

今回は、間接正犯の後編です(→前編)。間接正犯論は壮絶に難解です…。けっこうハードなので、がんばっていきましょう~ ◆学説と判例 前回は、「マインド・コントロール」を刑法理論に取り込んでみることを試みましたが、ここで一度、間接正犯の一般論を簡単…

マインド・コントロールと間接正犯(前編)

こんにちは~ 花粉症がつらい季節になってきました…。何か効果的な対策はないものでしょうか… ◆マインド・コントロールと刑事事件 本日のテーマは、「マインド・コントロールと間接正犯」です。 ある検察官の話では、被害者などの事件関係者の様子が明らかに…

刑法は何のためにあるのかクイズ

こんにちは~ 本日のテーマは「刑法は何のためにあるのかクイズ」です。刑法の存在理由や刑罰論をまじめに考えると、どこまでも果てしなく深いので、今回は、現在の学説等の状況について考えるために簡単なクイズ形式にしてみました。3問だけです。全問正解…

承継的共同正犯(後編)

ようやく承継共の後編です…あいだがかなりあいてしまた、、(→前編) ◆判例の展開 前編の内容を簡単にまとめると、本件の被告人は、被害者が一定程度暴行された後に共謀し、暴行に加担したということで、このような場合にも傷害の結果すべてが帰責されるのか…

裁判員裁判と死刑判決

こんにちは~ 今回は、最近の判例をフォローしておきたいと思います。テーマは「裁判員裁判と死刑判決」です。第1審の裁判員裁判で死刑判決が下された事案を最高裁がひっくり返したのです。 あまり刺激的な時事問題を扱いたくはないのですが、刑法ブログと…

承継的共同正犯(前編)

こんにちは~ お久しぶりです。あけましておめでとうございます(真剣にネタ切れでした)。 今回は「承継的共同正犯」がテーマです。 起案等では承継的共同正犯を肯定する見解で論証をしていた方もいらっしゃるかと思いますが、平成24年判例が出てきましたの…

204条の「傷害」

こんにちは~ クリスマスはいかがお過ごしだったでしょうか? 私はそれどころではありませんでしたが… ◆◆◆ 今回のテーマは刑法204条の「傷害」についてです。答案等では、「傷害とは、人の生理的機能を障害すること」と書く人が大多数です。この書き方自体は…

特殊詐欺

こんにちは~ お気に入りの手袋をなくして悲しんでいるところです…(TT) 手袋とかマフラーってけっこう電車に置き忘れたりしますので、みなさんもどうぞお気を付けください… さて、今回のテーマは、「特殊詐欺」です。「特殊」というからには、普通の詐欺とは…

行為規範と制裁規範

※最終更新:2016年4月10日 こんにちは~ 今回のテーマは、「行為規範と制裁規範」です。難しい議論ですが、どうもこれらの概念を知りたいという需要があるみたいなので、がんばって解説してみたいと思います。 行為規範と制裁規範の各概念の説明は、必然的に…

法人税法164条1項(後編)

◆何が問題となっているのか 前回は、本事案では、①被告人Bの脱税の指示(の有無)、②Bが設立した被告会社Aも法人税法164条1項(いわゆる両罰規定)により刑事責任を負うのかという点が問題になっているということを指摘しました。仮に直接行為者である社…

法人税法164条1項(前編)

こんにちは~ 本日は、法人に関する処罰の話です。刑法典は自然人を念頭に置いて記述されていますが、現行法では特別の規定により法人を処罰することもできるのです。この分野はかなり重要であるにもかかわらず、経営や会計が絡んでくるので、多くの刑法学者…

アメリカにおける正当防衛の考え方(後編)

こんにちは~ この記事は、アメリカの正当防衛論の後編です(→前編)。 ◆思いっきり余談 実をいうと、私は、はじめにアメリカ法をアメリカ人の教授から英語で学んだので、日本語訳はあとから知りました。Consideration を「約因」と訳しているのも最近知った…

アメリカにおける正当防衛の考え方(前編)

こんにちは~ 今回は、わりと時事的なテーマを扱います。テーマは「アメリカにおける正当防衛の考え方」です。時事的なテーマですが、政治的な問題を避けるため、ここではあえて時事的要素を出さずに、刑法理論として考えてみたいと思います。 ◆諸注意 先に…

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