※第3版が出ました。現在、それを読んでいるところなので、読み終わったら記事を改訂します。第3版を少し読んだ限りでは、どうも山口先生は犯罪論体系自体を大きく変更するみたいです。
今回、ご紹介するのは、山口先生の『刑法総論 第2版』(有斐閣、2007年)です。
初版はなかなか過激でしたが、第2版になって学説として落ち着いてきた印象です。山口先生には、同じく有斐閣から出ている1冊の青い本もありますが、同書は、いわばこちらの総論と各論のほうの自説に入る前までの部分の総集編+判例です。
◆位置づけ
- 分量:少(408頁)
- カバー:ハード
- 体系:結果無価値論
◆特徴
初版から驚異的な薄さでした。第2版も薄いです。
文章に「キレ」があります。徹底した結果無価値論です。特徴としては、だいたいこれで説明できている気がしますが、本書は必ずしも(初学者に対して)親切設計ではありません。書き方がシャープなので、自説に対して論理的に不整合な他の理論の部分はバッサリと切り捨てています。自説への批判に対する反論は、けっこう書いてあります。思想・哲学的な色彩がかなり薄く、政策的観点からすっきりと書いてあるので必ずしも「深み」はありませんが、批判もしにくいかんじです。考え方が、非常にシンプルです。それ以外の特徴をあげるのは不要でしょう。
司法試験受験生の中には、因果関係論を本書の「危険の現実化」の類型論で書こうと思っている方もいるかもしれませんが、山口先生は責任段階で処罰範囲を厳格に絞る考え方ですから、学説の「食い合わせ」に注意してほしいと思います。具体的事実の錯誤あたりは、踏み込んだ形で法定的符合説(※本書の立場は具体的法定符合説)を論じているので、そこも参考になるかと思います。
▼刑法総論の基本書については、こちらも併せてお読みください。
▼これがいわゆる一冊本(※第3版が出ました)。試験対策的には、これで十分かと。というか刑法にあまり時間を割かないほうがいいです。