緋色の7年間

制約を原動力に。法律事務所の弁護士と大手企業の法務担当者が、時に制約と闘い、時に制約を迂回していきます。

弁護士のための「ゆるふわ」キャリアデザイン論

こんにちは~

ブログの運営方針にも書きましたが、本ブログの主たる想定読者層は「これから法分野に関わろうと考える人」(多くの場合は学生)です。そして、その中でも、時代変化をポジティブに受容しようとする方々を念頭に置いて記事の内容等を考えております。何が言いたいのかというと、これからお話しする内容は、そのような価値観を持った方々のためのものだということです。

明言してきませんでしたが、本ブログの背景テーマは「実体論から関係論へのシフト」です。これまで書いてきた記事の様々なところに「他者関係性の論理」を織り込んでいるのに気が付かれたでしょうか? 刑法と絡めてそれを説明した記事もありますし、まったく明示していない記事もあります。この記事でも、基本的にこの視点から考えていきます。

◆なぜキャリアデザインなのか?

今回のテーマは、キャリアデザインです。これまで、弁護士はキャリアデザインを考えてきませんでした。司法試験に通れば職に悩むようなことはなかったりした上に、弁護士はその数の少なさから「何でもやるジェネラリスト」でしたので、キャリアデザインなど考える必要がなかったからです。しかしながら、時代は変わりました。司法制度改革で法曹人口が拡大し、弁護士にとって職業的な不安定要素が増えることになったのです。

市場としては健全になったといえるのですが、弁護士は一部を除いて「市場」というものをストレートに経験したことがないので、これまでのやり方にこだわる傾向があります。多くの現職弁護士は、仕事の内容を変えたいとは思っていないですし、変える必要性すら感じていないかもしれません。場合によっては、「法秩序の安定性」という建前論を持ち出してくる人もいますし、「市場=お金の話」という半分誤った図式を思い浮かべる人もいます。ですが問題は、弁護士自身が変わらなくても社会は変わっていくということなのです。

2012年、古き良きフィルムの時代にこだわったコダックは破産しました。急拡大したデジタルカメラ市場への対応ができなかったのです。これに対して、富士フィルムは、デジタルカメラに重心を移動するとともに、化粧品事業等にも進出して生き残っています。同じことが、司法の世界でも起きようとしています。グローバリゼーション、デジタル化、エネルギー政策、バイオテクノロジーの発展、会社法個人情報保護法の制定、債権法改正などなど、大きな変化となりうるものはいくらでもあげられます。弁護士であっても、今後の変化に適応できた人だけが生き残れます。

これまで先輩の背中を追いかけていればよかったところですが、そうはいかなくなりつつあります。従来のロールモデルが成立しなくなってきました。というより、そのままついていくと、谷底へまっさかさまに落ちていきかねません。したがって、これからの時代は、自分で道を切り開いていくしかなくなります。そこで、その方法論として考案されたのがキャリアデザインです。以前に「『知識人』はいかにして破滅するか」という記事を書きましたが、そこから一歩進んで、他者から求められる弁護士になることを考えたいと思います。

もちろん、未来を正確に予測した対応をすることはできませんが、大雑把な把握による計画と実行は可能です。以下では、弁護士向けのデザイン方法を書きますが、実は研究者も基本的に考え方は同じです。キャリアデザインの観点はたったの2つ、①専門知識の「連続的」習得と、②セルフマーケティングだけです(リンダ・グラットン『ワーク・シフト』(プレジデント社、2012年)237頁などを参照)。ただ、私はあなたの代わりにはなれませんので、最終的には、あなた自身が自分の人生をデザインしなくてはなりません。もちろん、「あえて」そんなことはしないという選択もありえます。キャリアデザインは、自分の人生の選択の問題であって、それ以上でもそれ以下でもありません。

◆セルフマーケティングの考え方

この記事では、②のセルフマーケティングだけをご紹介します(①に関しては、別の機会に触れられたらと思います)。セルフマーケティングとは、簡単に言えば、市場における能力証明です。自分の能力をクライアントに納得させる材料を確立することをいいます。

まず、当たり前ですが、職業免許が必要です。司法試験に通らなければなりません。制度論としてはともかく、職業免許がなければ仕事ができないのは当然です。ですが、これまでとは能力証明資料としての資格(免許)の価値が変わってきます。市場において、「資格」や「試験の順位」で自分を売り出すことは無能の証明です。なぜならば、クライアント(消費者)から「成果を出していない」と判断されるからです。仕事の成果よりも「資格」や「順位」を宣伝するような弁護士は、クライアントを軽視していると判断されてしまいます。

あなたは、今活躍している弁護士の中で試験の順位が高い人をどれだけ知っていますか? また、そのことをどれだけのクライアントが知っていると思いますか? おそらく、多くの人は今活躍している弁護士の「試験の順位」なんて知らないはずです。なぜならば、活躍している弁護士に「試験の順位」など不要だからです。彼・彼女たちには誇るべき仕事の成果があります。

その一方で、弁護士という肩書きそのものや試験の得点、順位などを誇示するような弁護士は、仕事で成果を出していないからこそそうするのです。あるいは、自惚れて成果を気にしていないのかもしれませんが、いずれにせよクライアントからすると、ひどく残念な感じに見えます。あなたがクライアントの立場だったとして、「仕事の成果で売り込む弁護士」と「試験の順位で売り込む弁護士」の2択だったら、どちらに依頼しますか? 要するに、そういうことです。

今のところ、法的には実現可能性はありませんが、たとえば、某通販サイトであなたへの依頼の権利を売り出したと仮定しましょう。それがそのまま市場のイメージです(これを「通販テスト」と呼ぶことにしましょうか)。

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★★☆☆☆ 23件のカスタマーレビュー

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で、レビューはこんなかんじです。

10人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。

★★☆☆☆ 正直、おすすめしません

投稿者 甲山太郎 投稿日 2014/11/20

Amasan で購入

知り合いから司法試験トップだと聞いて期待していたのですが、態度が傲慢で不快でした。もっとわかりやすい説明や丁寧な配慮をお願いしたかったです。依頼の結果はまずまずでしたが、ほかの人にはおすすめできるサービスではありません。

端的に言って、この商品を買うかどうかです。これが「通販テスト」です。

このように、資格や順位、登録番号の早さなどは、もはや能力証明資料にはなりません。もちろん、裁判官や検察官を目指している場合や、裁判所から選任される破産管財人等になりたい弁護士などは、「身内の評価」のひとつとして重要になるかもしれません。ですが、これらは公益的性格が非常に強い場面であって、市場原理が働かない特殊例外的な場面です。そうではなくて、まず考えてもらいたいのは、市場でいかにして自分をクライアントに売り込むかということです。

新人弁護士は仕事の成果がないので、資格等で売り込むしかありません。ほかに能力や信用を保証する資料がないからです。この状態だと、価格が安いどころか普通は仕事が来ないので、新人弁護士は最初にどこかの事務所に就職して「事務所の看板」(信用性)を借りることになります。事務所の看板を借りるとはいえ、独立した個人事業主(青色申告)ですから、しばらくすると「自分の」固定客がつくようになります。そして、数年後に独立するのです。

問題はこの瞬間で、このときに「クライアントの視点から見て」いかなる能力証明資料を持っているのかが重要になります。いうまでもなく、最大の能力証明資料は、仕事の成果ですが、そのための準備は司法試験前からやっておいても早すぎるということはありません。しかも、その成果は、自分の仕事にしたい分野であり、かつ、時代変化に対応するニーズをつかんだものでなくてはなりません。当たり前ですが、上の通販テストで見たように、一般市民を馬鹿にするような弁護士などは生き残れません。マナーや思いやりなども、その弁護士の信用性に大きく影響することになるでしょう。

それではまた~

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