緋色の7年間

制約を原動力に。法律事務所の弁護士と大手企業の法務担当者が、時に制約と闘い、時に制約を迂回していきます。

因果関係と客観的帰属2

◆判例の展開 前回は、判例の立場における因果関係の問題とは、結果の発生を理由として行為により重い違法評価を肯定できるかどうかの問題であると説明しました。したがって、因果関係論においては、結果の発生による行為の危険性の確証の関係、すなわち「危…

因果関係と客観的帰属

こんにちは~ 今日のテーマは、因果関係論です。 ◆何が問題となっているのか 行為、結果と並んで、因果関係は刑法総論における客観的構成要件要素のひとつです。ですが、因果関係の話に入る前に、そもそも犯罪において、なぜ「結果が」要求されるのかを考え…

いわゆる不真正不作為犯

こんにちは~ 今回は、刑法の解釈論の話に戻りまして、不作為犯を扱うことにします。 ◆何が問題となっているのか いわゆる不真正不作為犯の問題は、「実行行為」という構成要件要素の問題として位置付けられてきました。現在では、このような位置づけといい…

刑罰の起源

こんにちは~ 本日のテーマは、「刑罰の起源」です。考古学や人類学、人文思想等を飛び回ることで、かなりの分野を横断することになります。こういうのを一度やってみたかったんですよね~(学会じゃとても発表できません) ◆ロックアートと制裁 刑罰の起源…

刑法解釈と他者関係性

こんにちは~ 本日は、規範論のところで説明した「構造言語学(記号学)」を使った刑法解釈手法をご紹介したいと思います。この前の記事は、だいぶ大雑把で抽象的だったので、けっこうわかりにくかったかもしれません。そこで今回は、図解を多用しつつ、基本…

主観的違法要素

こんにちは~ まだ風邪が治らなくてつらいです。むしろ、どんどんひどくなってるかんじがします…(TT) 今年の風邪はしつこいですので、みなさんもお気を付けください… 例によって、この記事の位置づけです。 イントロダクション 第1回:モラリズムの排斥 第…

事前判断と事後判断

こんにちは~ タイトルがややこしくなってきたので、ここで一度まとめておきます。 イントロダクション 第1回:モラリズムの排斥 第2回:違法論の理論的根拠 第3回:事前判断と事後判断←この記事 補論1:規範概念 てなわけで、本日は、違法論第3回「事…

「知識人」はいかにして破滅するか

こんにちは~ いつも本ブログを読んでいただきまして、ありがとうございます。 今日は、私の経験から得られた反省を踏まえまして、人生上、みなさんに気を付けてほしいことを書いてみたいと思います。このことを気にしていないと、おそらく「なぜ私は認めら…

結果無価値論 VS 行為無価値論 入門(後編その1)

こんにちは~ 今日は、ようやく違法論の後編です。前編では、現在の結果無価値論と行為無価値論とでは、モラリズムの排斥という点において共通の認識を示しているということを説明しました。両立場とも、法益保護の思想に立脚しているのです。 記事がどうし…

「危険の現実化」の落とし穴

こんにちは~ 今回は、因果関係論のうち「危険の現実化」に焦点を当ててみたいと思います。 この記事を書いた当時、まさかここまで読まれるとは思いもしませんでした。それだけ学生が「危険の現実化」の理解に苦労しているということなのだろうと思います。 …

「規範」の正体と言語論革命

こんにちは~ 違法論の対立の「後編」に入る前に、「規範」についてもう少し理解を深めておきましょう。 「規範」は曖昧で、つかみどころがないと思う方は多いと思います。私もそう思いますし、実際のところ、研究者の間ではいまだに規範概念について共通の…

結果無価値論 VS 行為無価値論 入門(前編)

こんにちは~ みなさん、お元気ですか? 私は風邪で頭がフラフラです…(TT) 健康や体調の管理には十分に気を付けてくださいね! ◆2つの論点 「入門」とタイトルに書きましたが、今回は、違法論というへヴィなテーマです。前回は「『オレンジジュース』で考え…

「オレンジジュース」で考える違法性論

こんにちは~ 奇抜なタイトルですが、刑法上の結果無価値論と行為無価値論の対立を「オレンジジュース」で説明してみようと思います(いきなり意味不明)。今回は、カジュアルなかんじで話を進めていきたいと思います。 ◆イントロダクション:「オレンジジュ…

刑法総論判例インデックス

今回、ご紹介するのは、井田良・城下裕二編『刑法総論判例インデックス』(商事法務、2011年)です。個人的には、刑法総論の判例集の中ではダントツでおすすめです。見開きで収まる見易さ、持ち運びしやすい大きさ、ソフトカバー、適量で的確な解説などなど…

「判例」の読み方 入門編

こんにちは~。だいぶ寒くなってきましたね! というわけで、今回のテーマは、判例の読み方です。長文を反省して、なるべく簡潔に書いていきたいと思います(※下図は特に意味はありません)。 ◆判例とは 1.規範定立 まずは、次の判例を読んでみてください。…

平成20年度旧司法試験第二次試験論文式 刑法第2問 ふんわり解説

こんにちは~ 今回はやたら多論点な問題でした。本問のように、知ってるか知らないかで勝負がついてしまうような問題は、択一に限ってほしいところです。そこまで頭を使わないので、事例問題としては微妙な部類だと思います。とりあえず、判例多すぎ…細かす…

平成20年度旧司法試験第二次試験論文式 刑法第1問 ふんわり解説

こんにちは~ 久しぶりに旧司法試験の過去問解説です。 今回の問題は、念頭に置かれている判例・学説が古いせいか、けっこう単純だったように思いますが、よく考えるときわどかったりします。現在の司法試験との関係も考えると、いかにあっさりと書くかがポ…

医事法の世界へようこそ!

◆医事法の世界へようこそ! Welcome to the Medical Law world! …と言いたいところですが、医事法の世界は、ただいま鋭意建設中でありまして、「これが医事法だ!」と呼べるものはありません。そもそも医事法という法律があるわけでもありません。「医事法…

「法教育」を成功させるために

こんにちは~ 先日は、「司法制度改革期における弁護士のあり方」についてお話ししました。そして、事後救済型社会への移行が問題となっていることも説明しました(下図)。弁護士の新たな活動領域として、特に注目していただきたいのが図の左下のサークルで…

ブログ運営方針について

■本ブログの理念 本ブログは、以下の理念を持って記事を作成しています。 変化に対してポジティブであること データや数字による現況把握と対策 平易な説明とシンプルな図解 以上を「ゆるふわ」に実行することを心がけます。 ■提供するコンテンツについて 本…

あなたの組織がうまく回らない理由

こんにちは~ 本ブログは刑法専門のブログですでしたが、今回はビジネス関係のお話です。いえ、決して刑法と無関係ではないのですが、それは最後にお話しすることにしましょう。テーマは、「あなたの組織がうまく回らない理由」です。簡単に言えば、スタート…

交通事故に刑事罰を科すべきか

こんにちは~ 本日は、交通事故の話です。以前に書いた記事「犯罪って増えてるの?」では、犯罪統計を読むことの難しさを説明しました。今回も犯罪統計が出てきますので、批判的に読んでみてください。なお、犯罪白書掲載のグラフには余計なデータが入ってい…

よくわかる金商法上の有価証券概念

こんにちは~ 本日は、金融商品取引法における「有価証券」概念について解説したいと思います。 ◆金融商品取引法の適用対象としての「有価証券」 金融商品取引法は、簡単に言えば、投資者保護のための法律です(同法1条)。投資にはリスクが伴いますが、リ…

企業内弁護士を目指そう!

※私自身の法務部経験を踏まえて、追記・修正いたしました。(2016年5月22日) ◆企業内弁護士の活動領域の拡大 前回は、司法制度改革についてお話ししました。そこでは、司法制度改革によって、弁護士の活動領域が下の図のように拡大することをご紹介しました…

司法制度改革期における弁護士のあり方(法曹志望者向け)

こんにちは~ 本日は司法制度改革について考えてみたいと思います。司法制度改革といっても、その内容は多岐にわたっていますが、今回は主要政策である「多数の法曹の養成」(司法制度改革推進法第2条)に焦点をあててみましょう。「多数の法曹の養成」とは…

高橋則夫 刑法総論

今回、ご紹介するのは、高橋先生の『刑法総論 第2版』(成文堂、2013年)です~ 比較的新しい基本書です。 刑法総論 作者: 高橋則夫 出版社/メーカー: 成文堂 発売日: 2013/10 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ◆位置づけ 分量:中~多(570頁…

山口厚 刑法総論 第2版

※第3版が出ました。現在、それを読んでいるところなので、読み終わったら記事を改訂します。第3版を少し読んだ限りでは、どうも山口先生は犯罪論体系自体を大きく変更するみたいです。 今回、ご紹介するのは、山口先生の『刑法総論 第2版』(有斐閣、2007…

民事裁判と刑事裁判の構造的な違い

こんにちは~ 本日は、民事裁判と刑事裁判の「構造的な」違いについてお話ししようと思います。 はじめに、なぜ裁判構造の相違について注目するのかというと、民事裁判と刑事裁判で思考方法がまったく異なるにもかかわらず、ごちゃ混ぜに考えてしまって悩ん…

誤認逮捕って違法なの?

※大阪地裁平成27年6月15日判決(国家賠償請求事件)を踏まえて記事最下段に追記しました。 ※あくまでも刑事法の学習をテーマとしたブログなので、現実の社会問題の解決に関しては、弁護士や刑事訴訟法学者などの専門家の判断を尊重するようにお願いいたしま…

佐伯仁志 刑法総論の考え方・楽しみ方

今回、ご紹介するのは佐伯先生の『刑法総論の考え方・楽しみ方』(有斐閣、2013年)です。刑法総論の全範囲を網羅していないので基本書とは言えませんが、罪数論や刑罰論以外はだいたい書いてあります。 後述しますが、この佐伯先生の本は、公平性や正確性と…

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